2022年4月30日土曜日

金沢八景権現山公園の旧円通寺客殿

 近くの京浜急行金沢八景駅の山側すぐ奥に古風な苔の生えた藁葺(わらぶき)屋根の民家があることを、以前にここが通勤ルートでの通過駅になっていた頃から気になっていました。最近は長く工事をしているなと思っていたところ、この4月22日に、金沢八景権現山公園内の旧円通寺客殿として市民に公開されました。
江戸時代初期にこの地に東照宮が創建され、同じ頃に東照宮を管理する別当寺として円通寺が建てられました。江戸時代後期に、東照宮を詣でる人をもてなすために境内に円通寺客殿が建てられたそうです。その後、1868年の神仏分離令により円通寺が廃寺になってからは、円通寺最後の住職であった木村氏が還俗し、客殿を住居として使用し保存されてきました。平成27年(2015年)に、木村家が客殿の資産を横浜市に寄贈され、発掘調査、復元が進められ、今回の公開となったそうです。本格的な茅葺屋根も復元され、屋内の釘隠しには葵の御紋も随所にみられます。1年に2回は、藁葺屋根を害虫や腐蝕から守るため油性コーティングをする藁蒸(わらむし)も行われるそうです。
感心したのは、入口の案内板にある旧客殿の写真の精緻さです。明治5年(1872年)以前に、オーストリア=ハンガリー帝国の東アジア遠征隊が近くの海沿いにある瀬戸神社(このブログでも20211017に関連する記事をアップしたことがありました)の鳥居から円通寺客殿を撮影した写真がオーストリアの博物館に残っているとのこと。その正確な記録性には驚きです。
一巡しましたが、高台からは平潟湾も望め、駅からも至近で、客殿の藁葺屋根の重量感、客殿内装もうまく復元されており、八景での新しい歴史スポットになるように思いました。
一方で、これで、1昨年のシーサイドラインと京浜急行が直結した再開発と合わせて、金沢八景駅周辺は海岸側も山側も整備され大きく変わり、昭和の名残(海岸側が賑やかな飲み屋街でした)はすっかりなくなってしまい寂しい思いもします。
この日は、9,200歩コースでした。







右上にオーストリア=ハンガリー帝国の東アジア遠征隊が撮った乾版写真に旧円通寺客殿が記録されています。


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