先日は、この7/29に閉館する岩波ホールで、最後の公演映画「歩いて見た世界ーブルース・チャトウィンの足跡ー」を観てきました。上映に先だって閉館の挨拶のメッセージが流れました。1968年にできた岩波ビル内の岩波ホールで1974年から映画事業をはじめ、48年間に65の国・地域の274本の作品を上映してきたこと、諸般の状況から閉館せざるをえなくなったこと、これまで共通しているのは「生きる力を与える作品」であること(初代支配人の高野悦子氏)、などが簡単に説明されていました。
ホール入口では、これまでの全ての上映作品のパンフレットの掲示とともに岩波ホールの歴史も展示されていました。設立の趣旨として、当時、欧州で始まった世界に埋もれた名画を世に出す運動「エキプ・ド・シネマ運動」(仏語で「映画の仲間」の意味)の動きに呼応して、ミニシアターとしての活動を開始したそうです。エキプ・ド・シネマ運動では、発足当時には商業ベースにはなりづらいと考えられている名作を上映することを目的としており、それをも受けて、岩波ホールの上映作品の選択では、以下の4つの目標を掲げてきたとのこと。
・日本では上映されることの少ない、アジア・アフリカ・中南米など欧米以外の国々の名作の紹介
・欧米の映画であっても、大手興行会社が取り上げない名作の上映
・映画史上の名作であっても、何らかの理由で日本で上映されなかったもの。またカットされ不完全なかたちで上映されたもの。
・日本映画の名作を世に出す手伝い
1970年代の高度成長期の当時に、足元をしっかり見つめ、よいものを淡々と発掘する、このよう姿勢が新しく思えて興味をもった記憶があります。
「歩いて見た世界ーブルース・チャトウィンの足跡ー」は、世界にいまも実在する神秘な世界を訪ね歩いた英国の紀行作家ブルース・チャトウィンの主な著書を材料にして独国の映画監督ヘルツォークが8章に分けて映画にしたドキュメンタリでした。パタゴニア、オーストトラリア、ケニア、北極圏などの原住民の風習について、関係者に、生前にチャトウィンと親交もあった監督自身がインタビューする形式で話が進められます。難しいテーマをテンポよく切れの良い映像で現場が再現され観客が引き込まれます。時代の進歩のなかで西欧文化の進出に批判的な立場から悩みながらもルーツを掘り下げていく、なかなか説得力のある映画でした。チャトウィンが生前愛用した革のリュックを譲り受けたヘルツォークが、リュックをもって次々と神秘の現場を訪ねる風景はリアル感が伝わってきます(パンフレット裏面左下の写真です)。
なんとか、これで閉館を静かに見送れます。
(関連記事をこのブログ5/31の「岩波ホールの最終公演」でもアップしています)
のも岩波ホールだったとか
岩波不動産ビルの10階に
あります(神保町交差点から)
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