2023年6月11日日曜日

映画「ハマのドン」のこと

 先日、気になっていたドキュメンタリ映画「ハマのドン」を地元のミニシアタで観てきました。
横浜港の山下埠頭にIR施設を誘致するかどうかで、2019年の横浜市長選挙までもつれ込んで争われた論争を、カジノ・博打阻止として立ち上がった市民運動側から映像化した作品です。結果的には、反対派が大差で勝ち、IR誘致を中止しました。
その運動に大きな影響を与えたのが、地元の港湾業者を束ねる藤木幸夫氏(91歳)でした。保守の重鎮でありながら、カジノは次の世代の横浜の看板・顔にはいらない、戦後復興期の港湾労働者を経験し、業界をみてきた経験から「博打だけはダメだ」という賭け事中毒、(パチンコレベルではない)ギャンブル依存症への強い危機感が、誘致阻止に動く動機になり、カジノ反対の根強い市民運動・署名活動(17万筆になりました)と重なっていきました。藤木氏の横浜港湾労働者としてミナトを守るといった誇り、矜持、信念といったものが、氏の生い立ちや人間性とともに、軽妙に描かれていました。

当時、官房長官、総理であった菅さんは、横浜選出の国会議員で、市会議員の頃に藤木氏の支援もあり国会議員になったそうです。その菅人脈との複雑な争い(保守系の小此木氏や林前市長他)から総理退陣に至る経緯も淡々と描かれています。
感じますのは、「横浜の顔」である山下埠頭に、珍妙で巨大な、カジノの入るリゾート施設が似合ったのか、都市としての価値の変化について基本的なアセスメントができていたのか、仮にIR施設ができれば、横浜の価値は上がるどころか、逆に下がったのではないか、といったリスクの予測が行政と市民で共有できていなかった、ということでした。東京オリンピック2020に際して新国立競技場の建設のコンペを通じて最初に選ばれた、トルコの建築家のデザインによる提案が結局実施されなかった顛末に似ています。「観光立国」とうたい、1兆円の投資、倍加する税収、などばかりが交錯していたように思えます。「観光立国」施策も、インバウンド客の増加策くらいに留めておいて、IR施設誘致は行き過ぎた事例だったのではないか、とも思えます。
一方で、大阪は夢の島にIR誘致する方向ですが、あそこは「大阪の顔」ではないので大阪の価値は下がらない、という認識が共有されていればよいのですが。

考えさせられ、なかなか印象に残る映画でした。



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