2025年7月18日金曜日

映画「国宝」を観て

 7/15には、雨天の中、近くのTOHOシネマ上大岡で、いま評判の映画「国宝」を観てきました。
この作品は、歌舞伎の世界を舞台に、戦後の混乱期に、逆境の中で女形という芸に人生を捧げた主人公 喜久雄(吉沢亮)が、大きな起伏を経て立花庄之助という人間国宝になるまでの50年を描く壮大な人間ドラマでした。(注)
ものものしいタイトルとともに上映時間3時間と聞いて、なにか重量感を期待しての入場でしたが、時間を感じさせず十分な手応えでした。
歌舞伎という芸の道の光と影、そしてモノではない芸の「国宝」という命の輝きとその影の葛藤の一面をよく伝えているように思いました。
庄之助の人生は、幼い頃から歌舞伎の道に足を踏み入れ、恵まれた才能を持ちながらも、常に芸の頂点を目指し続ける苦悩と喜びの連続でした。彼は、稽古に打ち込み、舞台に立ち、観客を魅了する中で、役者としての喜びを感じる一方で、古典芸能の継承と革新、師弟関係、そしてライバルとの競い合いといった、様々な重圧に直面します。彼が芸の道の厳しさを痛感しながらも、ひたすらに芸を磨き続ける姿が幾つかの逸話でコンパクトに表現されます。ここでは、共演の吉沢と横浜の演技が光っています。1年半かけてトレーニングしたそうです。
また、単なる歌舞伎役者の半生記に留まらず、庄之助を取り巻く人々との人間関係もよく描かれています。厳しくも愛情深い師匠(渡辺謙)、境遇は違いながらも互いに高め合う、同年齢のライバル(横浜流星)、幼馴染の女性、遊女、他との複雑な人間模様が、うまく織り込まれているな、と感じました。田中泯、寺島しのぶ、ほかの名脇役が効いたかもしれません。
さらに、映画全体を彩る映像美も破格で、大写しで切れの良いカメラワークが邦画離れしています。歌舞伎の舞台裏や、化粧、衣装、そして舞台上の所作の一つ一つが、丹念に、ダイナミックに描かれています。とくに、幾つか出てくる実際の歌舞伎の演目(曽根崎心中、二人道成寺、連獅子、二人藤娘、鷺娘など)のクライマックスシーンの映像もよく撮れています。音響もまた、歌舞伎特有の響きを忠実に立体的に再現しており、臨場感もよく再現されていました。
久々に、心地よい邦画の重量感を感じて、映画館を出ました。外国人にも通じるテーマであり十分理解できるので、邦画のよき成功例になってほしいと思います。
この日は、雨と映画で少な目の5,800歩コースでした。


チラシから

(注) 映画「国宝」のあらすじ
映画『国宝』は、吉田修一の同名小説を原作とした作品で、歌舞伎界を舞台に、芸に人生のすべてを捧げた、境遇の異なる二人の男の対照的な生き様を描いています。
物語は、戦後の混乱期に九州の任侠の家で生まれ育った主人公・喜久雄(吉沢亮)が、抗争による親の死をきっかけに歌舞伎の世界に足を踏み入れ、天才的な才能を開花させていく過程を中心に展開します。彼は厳しい修行と舞台での経験を重ね、やがて「国宝」と称されるほどの名優となります。一方、喜久雄の同じ年齢の幼なじみであり、同じく歌舞伎役者として生きる俊介(横浜流星)は、喜久雄とは異なる価値観と葛藤を抱えながら芸を追求します。
二人の友情、競争、健康問題、そして芸に対する執念が、時代の移り変わりとともに交錯し、やがてそれぞれの人生の選択へとつながっていきます。伝統芸能の美と厳しさ、そして人間の業を描いた本作は、芸の道に生きる者の孤独と誇りを静かに、力強く映し出します。
監督は李相日で日系3世の韓国人、撮影のソフィアン・エル・ファニはフランス人で、ともに国際的な視点から日本の伝統芸能を捉え、美しく映像化しています。ある意味では、日韓仏合作映画かもしれません。175分東宝配給。 (関連HPから引用・編集)

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